【ライブ鑑賞レポート】SUPER BEAVER「15th Anniversary 都会のラクダSP 特大のラクダ、イッポーニーホーサンポー @横浜アリーナ」
私が SUPER BEAVER というバンドと出会ったのは、つい最近のことだったりします。
名前自体は、あるいは曲自体はずいぶんと前から知っていたのかもしれません。それでも、その音楽を意識し始めたのは、2017年、THE BACK HORNの対バン相手として呼ばれていたことがきっかけでした。当時リリースしたばかりの美しい日や秘密、青い春、そして証明。渋谷さんの真っ直ぐな声で歌われる真っ直ぐな歌詞に一気に心を持っていかれ、それから参戦するフェスにSUPER BEAVERの名前があれば最優先でそのライブを観てきました。
たった3年。SUPER BEAVERを追いかけて、です。フェスで見逃したことは一度もありませんでしたし、そのライブを観た回数は両手で収まりきらないほどです。
それでも、私はSUPER BEAVERのワンマンライブを観たことは、今まで一度もありませんでした。いつだってライブ公演が発表されればチケットを申し込み、外れても何度も何度も申し込み、けれども、ついぞ一度も当たることがなかったのです。……今回までは。
以下、2020年12月8日に行われたSUPER BEAVER「15th Anniversary 都会のラクダSP 特大のラクダ、イッポーニーホーサンポー @横浜アリーナ」の鑑賞レポートです。ライブ内容、およびセットリストに対しての記載もありますので、ネタバレの存在をご留意いただけると幸いです。
セットリストは以下の通りでした。
- うるさい
- 青い春
- 証明
- irony
- 嬉しい涙
- シアワセ
- ひとりで生きていたならば
- 突破口
SUPER BEAVERは今年で結成15周年。そのアニバーサリーとして企画されたアリーナツアー。そのファイナル。SUPER BEAVER初の横浜アリーナ単独公演が、本来ならばこの日開催される予定でした。
そして、私のSUPER BEAVER単独ライブ初参戦も、本来ならばこの日のはずでした。
しかし、今年の初めから続いたコロナ禍。それがまさか12月まで続いて、こうしてビーバーの横アリ単独ライブを中止に追い込むというのは、やっぱり中止確定寸前まで私には信じられませんでした。
発表されたアリーナツアーの中止。それでも、ビーバーはそれだけで終わりませんでした。横浜アリーナで無観客ライブを実施し、その内容を配信すると宣言したのです。
横浜アリーナには私も何度か足を運びました。広いキャパシティ。それなのに手を伸ばせばステージにまで届きそうな。アリーナなのに距離が近い。いつだって最高のライブを届けてくれたアリーナでした。
20時。案内されたURLにパスワードを打ち込んで、映し出された景色は、どこまでも空っぽのアリーナでした。アリーナの真ん中にステージ。いくつもの装飾と、自由に跳ね回る証明と、誰一人いない観客席。ライブが始まる前はいつだって静寂が会場を包み込みます。それでも、この日の静寂は何処までも孤独でした。
そして、そんな孤独なステージに4人が入場してきました。
「中止になったツアーの払い戻しを希望しなかったあなたに向けての配信です」
渋谷さんの放ったそんな言葉とともに、こんな現状が喧しい、気に入らないといわんばかりに一曲目、うるさいがはじまりました。
「うるさければ耳を塞いで でもあなたの声は聞こえてるよ」
配信ライブ。この声を聴いている私たちの声を、ステージまで届けるのは到底不可能です。けれど、皆も一緒に歌ってくれと言わんばかりに、渋谷さんは私たちを煽るのです。たとえ今日この会場に来れなかったとしても、その声は届いているから。この日のビーバーは私たちの声を、より大きな声を求めてきました。ライブが届く場所はアリーナじゃない。でも、そこを最高のライブ会場にしようと。
「はじまりはいつだって青い春」
お決まりの言葉とともに、はじまったのは青い春。両手を目いっぱいに掲げて、その歌詞を一緒に歌って。いつしか、私の声もアリーナに届いているんじゃないかって、そんな気すらしてきたのです。
誰もいない横浜アリーナ。これはこれで良い景色。そう言って、やはり直ぐに否定。
「良いものでは、ないな」
15周年。初めての横浜アリーナ。きっと、ビーバーにもやりたいことがたくさんあって、考えていたことがたくさんあって、そして頓挫したものもたくさんあって。
それでも、この日、やり直すことだって出来たはずの初めての横浜アリーナの公演を、こうして私たちに届けてくれている。
「誰も独りきりでは無いという証明」
こうして今、SUPER BEAVERのライブを観ている。こうして今、SUPER BEAVERは横浜アリーナで立っている。ライブをしている。そのことを証明している。証明できる私たちは今まさに間違いなく独りきりではない。その証明を決定的なものとするために、
「ないという証明」
このリフレインを、SUPER BEAVERは歌い続けます。そして、そんなビーバーに促され、私も、きっと配信を観ている皆も、この証明のために歌い続けました。
「あなたがいる場所をダンスフロアに変えてみせます」
そう言い放って、ビーバーの中でも身体が勝手に動いてしまう曲、ironyがはじまりました。暗い部屋。あるのはビーバーの姿が映し出されるディスプレイだけ。それでも、この瞬間は、そんな部屋の中で踊るのを止められませんでした。
ダンスフロアが再び静寂に変わり、渋谷さんの声が始まりました。SUPER BEAVERを支えた曲、ずっと支えてきた曲。そう前振りがあり、嬉しい涙、シアワセの二曲が披露されました。
一度メジャーデビューし、しかしまたインディーズに戻り、そして今年、再びメジャーデビュー。SUPER BEAVERは横浜アリーナに立てるバンドの中でも、特段紆余曲折を経て、そこにいるバンドだと思います。そんなビーバーを初期から支えてきたシアワセという曲が、この時点で、この配信ライブで、こうして演奏されたのは。きっと、日常を壊されながらもビーバーに付いて来た皆に向けての恩返しだったのかもしれません。
ストリングスとともに演奏されたひとりで生きていたならば。そして、
「この曲があなたの突破口となりますように」
そんな言葉とともに、最終曲突破口。
「これからもSUPER BEAVERというバンドを信じて、ついてきてください」
強い言葉。でも、決して無責任に吐かれた言葉じゃない。真っ直ぐで、強い思いを突破口という曲に詰め込んで、安心してこのバンドについていける! そう信じさせる、力強い演奏でした。
たった一時間。8曲。それでも、そこに込められた思いは、こんな状況だったからこそ、非常に強く、響いてきたのだと思います。
この瞬間はこの最低な一年間の中で、確かにかけがえのない最高の時間でした。
「明日も会いましょう」
明日だけでなく、これからもずっと。SUPER BEAVERというバンドを信じていきたいです。