【ライブ鑑賞レポート】ONAKAMA 2021
私がONAKAMAの3バンドの存在を知ったのは、かれこれ6年前、2015年のことです。当時の私はとにかく格好良い音楽を聴きたくて聴きたくて、それでオーラルの起死回生STORYやブルエンのDAY×DAY、フォーリミのmonolithあたりを知って、それで一日中ずっと聴き続けるみたいな生活を送ってきました。 以来、アルバムツアーや各バンドが主催するイベント、フェスでも率先して観に行くなど、その背中はずっと追ってきたんじゃないかなと自負しています。
6年も追いかけ続けてきたのだから、当然ONAKAMAという存在も知っていました。2016年、新木場STUDIO COASTにてTHE ORAL CIGARETTES、BLUE ENCOUNT、04 Limited Sazabysの3バンドが対バン。その発表を観たときに、関西でやってくれないかなと非常にやきもきしたのは今でも覚えています。もともと3バンドはインディーズ時代から物凄く仲が良く、だからこそこの3バンドだけで構成された対バンライブってのはいったいどういうものなのか、何としても見たかったのです。しかし、結局見ることは叶いませんでした。
それ以降、ONAKAMAという名前は各バンドが時々話題にあげるものの、その開催が宣言されることはありませんでした。オーラルが開催したPARASITE DEJAVUやフォーリミが開催したYON FES、あるいは全国各地で開催されているフェスなんかでも3バンドが同じ日に見れることはありました。それでも、やっぱりONAKAMAには何処か、あこがれを5年間抱き続けていたのだと思います。
そして、去年。ついに5年ぶりにONAKAMAが開催されることが決まりました。今回は各バンドの所縁のある地のアリーナでツアー形式。関西もオーラルがいるので、開催が決定しました!
そこからは死に物狂いでチケットを確保し、体調管理に気を付け、かつONAKAMAが無事開催されることを祈り続ける毎日。そして、ついにその日を無事迎えられました!
以下、2021年1月31日に行われたONAKAMA 2021@大阪城ホールの鑑賞レポートです。ライブ内容、およびセットリストに対しての記載もありますので、ネタバレの存在をご留意いただけると幸いです。
時世が時世なだけあって、従来のライブとはやはり違った点は多かったように思われました。観客は皆マスク着用必須。観戦追跡アプリcocoaのインストール有無の確認、非接触型の体温計で発熱の有無をチェック、アルコール消毒の徹底、座席の間隔、物販の事前予約性、などなど。気になる点はすべて何かしらの工夫がされていたように思えます。それだけこのライブの開催にかける思いが強いということを感じられて、それだけで物凄く嬉しくなったりもしました。
ONAKAMAは3バンドの対バン形式。関西編なのでおそらくトリはオーラルですが、それ以上の情報はわかりません。先にどちらのバンドがライブをするのか。期待に胸を膨らませつつ、会場BGMとして流れたFM802の落合健太郎さんの語りを聴きながら、開演のその時を待ちました。
そして、ついにその時を迎えました。ONAKAMA2021の映像。そして3バンドのメンバーのそのバンドに対する思いが語られ、そのバンド名が発表されました。
The First Act
04 Limited Sazabys
その名前がモニタいっぱいに表示され、歓声の代わりと言わんばかりに、会場が震えるほどの拍手が沸き上がりました。
いつもの入場SE。観客たちはめいっぱいに腕を振り上げ、そしてクラップを始めます。その拍手に応えるようにメンバーがステージに登場。各々が自身のパートの楽器を持ち、そしてその楽器の音が入場SEをかき消していきました。
04 Limited Sazabys のセットリストは以下の通りでした。
- swim
- kitchen
- My HERO
- BLACK MEMORY (THE ORAL CIGARETTES)
- knife
- Alien
- midnight cruising
- hello
- Squall
- monolith
- message
こんなご時世でも勇気出して来てくれてありがとう。そんな思いを届けるかのように、フォーリミが開幕に持ってきたのはバンドの代表曲であるswimでした。日頃の思い。現状。そう言ったもろもろを今日のために耐え忍んできた。その思いを一気に爆発させるかのように。声こそ出せませんが、しかし客席の熱気は最高潮に高まり、オガリュウの掛け声に合わせ、ひたすら拳を突き上げ、客席を泳ぎ、信じる未来のためにさらに拳を高く天へと掲げていました。
swimが終わるとKOUHEIの小気味良い高速ビートが展開されます。きっと観客にいる全員が何の曲が来るのかを分かっているのでしょう。それに合わせクラップを続け、GENの「ワン、ツー、ワンツースーリーフォー」の掛け声に合わせ指折り数え、kitchenのビートに身を委ねていました。「にゃんごろにゃんごろぐーたらーすーたらぱおぱおぱんぱんぱん」の歌詞に合わせアリーナ全体でクラップが決まるのが非常に気持ちよかったです!
kitchenが終わり、一瞬の間が開いて。だけど休むのは許さないといわんばかりに「My HERO!」とGENの掛け声に合わせ、さらに高速ビートが展開されます。客席から見たフォーリミの姿はまさしくマイヒーローで、気づけばライブ前に抱え込んでいた不安当たりの負の感情はこのあたりですっかり消えてしまっていました。
「先週のONAKAMAでブルエンのえぐっちゃんとオーラルのあきらかになんとかがねん挫して、田邊が右肩脱臼して……」
と開幕のMCでいきなり物凄い話が披露されました。それだけこのライブに懸ける思いが強いんだと嘆息を吐くのと同時に、今日、ライブが開催されて本当に良かったと少しばかり思ってしまいました。
「無事なの俺らだけじゃん!」
そんなMCが終わり、フォーリミが次に始めた曲は、聞き覚えはあるんだけどフォーリミの曲としては知らないリズム。「人の曲、やらないから」とGENが呟くのですけど、楽器隊は演奏を止めることなく。「Get Get it up!」と歌い始めるGENに、一瞬何が起こったか正直よく分かりませんでした。BLACK MEMORY。オーラルの曲が始まりました! そう言えばパラデジャで以前未遂してたっけなぁとか考えつつ、それでもBLACK MEMORYは終わることなく。結局、最後の最後までやりきってしまったので、フォーリミは伝説を作ったんだと思います。
すっかり抉られてしまった心をさらに突き刺そうと、knifeが続きます。抉られ、刺され、そこを埋めるかのようにフォーリミの音楽は染みわたっていくみたいでした。knifeに続いたのはAlien。邪魔させないと、その言葉はこの日に対してだったのかもしれません。
「オーラルの曲はラスサビで明るくなるけど、俺らの曲は最初っから明るい」
「次の曲は最後に明るくなる。時間は全然違うけど、深夜の曲」
midnight cruising。まだ、外は明るいかもしれないけど、アリーナの中ではステージの上だけが輝いていて、そんな星を目掛けて暗闇の中手を伸ばす姿に、何となく懐かしさを覚えたり、そんな自分に寂寥を覚えたり。こんな日がいつか当たり前になれば良いのに、と心のふちで少し思ったところで、それを慰めるかのようなメロディ、helloが続きました。ふわりふわりちょうどいい空気。この歌詞に、幾度となく救われてきたなって感傷に浸りつつ、今もまた救われている自分がいました。
「世界が複雑になって、だけどそれをシンプルにするために音楽がある」
「考えすぎんな考えすぎんな……」
「新しい自分に生まれ変われ!」
フォーリミはいつだってこの曲の前振りで、この言葉を叫びます。だけど、今日は、いつも以上に響いた気がします。Squall。このくらい世の中の鬱屈した空気をすべて洗い流すかのように。雨の日の翌日の清々しい世界を届けるために。いつだってフォーリミは私たちの負を洗い去ってくれる。
「ラスト。渾身のmonolith!」
5年前のONAKAMAでも演奏された曲、monolith。あの時は開幕でしたが、今日はフォーリミを締めるために。この5年間をずっとフォーリミを支え続けてきましたし、これからもきっと支え続けるのでしょう。渾身。その言葉に込められた通り、会場が一つになるその瞬間を届け、monolithは終わりました。
盛大な拍手。だけど、きっとみんな何処か期待しながら。フォーリミはいつだって、ここで終わらない。
「ちょっとだけ時間が余ったから」
「これは5年前から2021年に向けてのmessage」
フォーリミの中でも飛び切りに短い曲。message。しかし、短さゆえかその曲に込められている思いはいつだって大きすぎます。今日が終わりじゃない。このmessageをまたいつの日にか届けるために。そう確信できた、04 Limited Sazabys のライブでした。
オーラルはおそらくトリ。なら2番手は。そんなことを考えているうちにアリーナは暗くなり、また映像が流れだしました。
BLUE ENCOUNT
先ほどと同様、割り切れんばかりの拍手がアリーナを包みます。
その拍手が鳴りやむ前に入場SE Break Down The Clockが流れ、会場は高まっていきます。
BLUE ENCOUNT のセットリストは以下の通りでした。
「はーじまーるよー」と田邊のいつも通りの言葉からブルエンのライブは始まりました。「1曲目から踊れる人手挙げて」その言葉に会場全体が手を挙げた頃、「バッドパラドックス!」との紹介の後に、ややハードボイルド感のあるリフが始まりました。客席は揺れんばかりに皆が飛んで、跳ねて、踊り狂って。1曲目の時点で、ブルエンの世界は完成していました。ブルエンはこの曲のことを物凄く信用しているんだな、と。SICK(S)のツアーの際に中野サンプラザで聴いたあのリフを思い出しながら、私もひたすらに飛び跳ね続けました。
休みなんて与えない。今、ここでお前らは生きているんだ、と。そんな言葉が込められているかのように、Survivorが始まりました。今日まで生きて、ここに来て、この風景を作り出している。私たちがきっとSurvivor。
「客席ありだからバラード多めに入れるかとか、アリーナ用のセトリにするかとか、そんなの考えるうちによくわかんなくなった」
「ライブハウスで育ったバンドを見せます」
そんな宣言から、ここからはオーラルでいうキラーチューン祭が始まりました。KICKASS、NEVER ENDING STORY、ロストジンクス、VS。休む間も与えず、曲と曲の隙間すらほとんど設けず、一気に駆け抜けていきました。ブルエンをずっとずっと支え続けてる曲、そしてブルエン渾身の応援歌。どの曲も客席のコールや合唱があって非常に盛り上がる、ライブの定番中の定番曲です。けれど、今日は客席は誰一人として声は出せません。けれど、心の中で、あるいは身振り手振りを使って、全身全霊で曲に思いを乗せて、ブルエンに届けて。4曲の間ずっと飛んで、跳ねて、熱量だけならいつものライブと変わっていなかったと思います。
「規制とか制限とかされてさ、それを「はい、わかりました」だけで済ませるのは寂しくない? 俺は寂しい」
「規制とか制限とかがあるなら、その中でやりたいことをやりたいじゃん」
「元通りになれたらって、俺らが信じなきゃ誰が信じるんだ」
「ここで歌うってのは俺のエゴなのかな?」
MCで、少しばかり今の自分に対し懐疑的な言葉を吐く田邊。当然、誰もその言葉に答えは返せず、だからこそライブを目いっぱいに楽しむ。ただそれだけ。次の曲も、ブルエンをずっと支え続けている曲、DAY×DAYでした。誰もこの曲を楽しめない人はいない。入りのクラップも。掛け声も。ラップ部分も。みんなみんな、楽しみ方は知っている。声こそ出せないけど、代わりにいつもより高く拳を突き上げて、クラップを強くして。
「俺だけのエゴじゃなかった」
「みんながいるから歌えてる。そこにあなたがいれば、俺らはもっとやれます」
「あなたはあなたらしく、そこで輝いていてください」
ブルエンの最後の曲は、灯せ、でした。灯せよ、希望を。暗闇を照らせ。まさしく今を打破するための、私たちに向けての応援歌。いつだってブルエンはそうだった。ライブで笑わせて、泣かせて、そして最後に私たちを支えてくれる。最後の曲は、いつだってとんでもないパワーを持っている。
「共に行こう」
そんな言葉を最後に叫び、BLUE ENCOUNTは私たちに光を届けてくれました。
最後に出てくるのは……。もう何も考えずとも分かります。フォーリミ、ブルエンと繋がれたバトンを、このバンドはきっと最高の形で締めてくれます。
The Final Act
THE ORAL CIGARETTES
入場SE、ステージへのメンバーの入場。そして
「一本打って!」
オーラルのいつものライブ前儀式が始まりました!
「三本打って!」
「トリかぁ……。最高やろうなぁ。地元やで」
関西出身のオーラルはきっとこのライブを最高にぶち上げてくれるはず。本人の言葉からもその確信ができるほどに、気持ちは高まっていきます。
THE ORAL CIGARETTESのセットリストは以下の通りでした。
- 容姿端麗な嘘
- 狂乱 Hey Kids!!
- Dream In Drive
- リコリス
- トナリアウ
- ワガママで誤魔化さないで
- カンタンナコト
- BLACK MEMORY
- ReI
「お前ら跳べよ!」
オーラルが一曲目に持ってきたのは、とびっきりのキラーチューン、容姿端麗な嘘でした。2年前のパラデジャでも見た風景。大人数が一斉に飛び跳ねる世界。これからオーラルが見せる世界にめいっぱい期待をして、一瞬一瞬を全力で楽しみます。
そしてその興奮が冷め止まないままに、さらにキラーチューン、狂乱 Hey Kids!! がアリーナに轟きます。
「大阪の皆さん、よく出来ました」
その言葉が聴きたくて聴きたくてどうしようもなくて。いつも聞いていたはずの言葉なのに、ずいぶん久しぶりに聞いたからか、ずいぶんと叫びたくなってしまいました。
「ここに来るまでにいろいろな不安とかあったと思うけど、フォーリミ、ブルエンでそういうの消えたと思うので」
「あとは皆さんをてっぺんに持っていくのが俺らだと思ってます」
そのまま始まったのが、格好良いを最大限に表現した、Dream In Drive。ヤマタクが歌詞を忘れてしまうなどありましたが、初めてライブで観れたこの曲は、やっぱり妄想していた世界よりも何千倍に格好良かったです。
「大阪でしかやらない曲やります」
その宣言の後に始まったのがリコリス。生きた証を求めるのはいつだってそう。だけど、たぶん、今はいつも以上にそれを求めてる。オーラルの中でもとびきり好きな曲ということもあってか、聴くのに夢中になって身体を上手く動かせませんでした。
そしてそのリコリスの空気を引き継ぐように、トナリアウが続きました。寄り添ってくれる、オーラルの曲。不安なのは誰だってそう。だからこそ、曲が支えてくれる。オーラルの中でもずっとずっと優しいこの曲は、きっとこれからも私を支えてくれるのでしょう。
「自分の正義を貫いてください」
「残りは3曲」
その1曲目はワガママで誤魔化さないで。クラップと手を振る様が会場で一体になるこの曲は、ステージから見たオーラルにとって、とびきりの景色であってほしいです。
2曲目。カンタンナコト。飛び跳ねて、ヘドバンして、いつもだったらサビで合唱して。歌っている内容は物凄く暗いはずなのに、なぜかとても楽しくて、そして力をくれるこの曲は、今日だって物凄く輝いていました。
そして3曲目。オーラルのラストの曲。BLACK MEMORY。フォーリミに直前でカバーされていましたが、本家を見せてやると、いつにもまして迫力のある世界が広がっていきました。願わくばこの曲を皆で合唱できる日が来ますように。様々な思いを曲に乗せて。そして、これからもずっとオーラルの背中は追い続けるんだろうなと確信して。ちょっぴり忘れかけていた何かを取り戻せた、THE ORAL CIGARETTESのライブでした。
ラスト。ゲストとしてフォーリミのGENとブルエンの田邊を交えて、オーラルのReIが演奏され、ONAKAMA2021は終了しました。パラデジャで観た景色と、同じ景色。だけどあの時とはまた違う、響き、世界、感情、変わらないのはライブは最高だってこと、ONAKAMAは最高だということ。。
5年越しに叶えた念願のONAKAMAでしたが、生きるのは最高だということ、そしてこんな日々が一日でも早く戻ってきてほしいということ、ONAKAMAの3バンドはこれからもずっとおいかけていたいということ。出していけばきりがないほど、感情があふれ、言葉にすらできないほど溜まっていきました。
ONAKAMAはツアーファイナルとしてまだ福岡編が残っています。きっと最高の景色を見せてくれるのでしょう。音楽に救われるということを、非常に身にしみて感じた、最高のライブでした。
信じた人たちを信じて、このライブを観ることができて、心から良かったと思えます。