【ライブ鑑賞レポート】SUPER BEAVER「15th Anniversary 都会のラクダSP ~全席空席、生配信渾身~ @横浜アリーナ」

 最低な一年の中の、最高の瞬間。
 あの瞬間、家で。職場で。帰り道で。電車で。バスで。いや、何処だって。液晶越しに見つめた一時間を、見たすべての人がその言葉を体現できたのでしょう。
 誰も観客のいない横浜アリーナ。寂しげな世界の中心で、それらを吹き飛ばす光と、音のステージ。そこに立つ4人は、SUPER BEAVERの世界でこの最低な世界を塗り替えたのです!

 以下、2020年12月9日に行われたSUPER BEAVER「15th Anniversary 都会のラクダSP ~全席空席、生配信渾身~ @横浜アリーナ」の鑑賞レポートです。ライブ内容、およびセットリストに対しての記載もありますので、ネタバレの存在をご留意いただけると幸いです。

 
 セットリストは以下の通りでした。

 

  1. ひとりで生きていたならば
  2. 突破口
  3. 正攻法
  4. 閃光
  5. 予感
  6. 東京流星群
  7. ハイライト
  8. 人として


 SUPER BEAVERの15周年を祝うアリーナツアー。そのファイナル。横浜アリーナ2Days。一日目はライブのチケットを購入し、払い戻しを希望しなかった皆に。そして、二日目はチケットの購入有無など関係なく、全世界へと届けられました。
 

  ライブの開始とともに、ステージには既に4人の姿がありました。寂寥を感じさせる淡い色の照明。スモークに拡散された光に照らされ、渋谷さんの呼吸とともに
「ひとりで生きていたならば こんな気持ちにならなかった」
 真っ直ぐな歌詞が、声が世界に響いていきました。
 暗い世界。暗いアリーナ。ただ一つ、そこで輝くステージ。何もかも感情を忘れ空っぽになってしまった心に染みていくかのような、そんな独白ともとれるこの曲。世界が呼吸を止めてしまうほどの長く感じられたこの瞬間を、あっという間にSUPER BEAVERが救っていきました。

 渾身のバラードで世界を染め上げ、続けて渋谷さんはこう語りました。
「あなたにお送りする1時間。しっかりと目に焼き付けて楽しんで帰ってください」
 昨日とは異なり、今日は全世界に生配信。それでも、その思いは変わることなく、全員に最高の瞬間を届けるといった宣言。一瞬の間に感情が期待で沸騰させられ、そして2曲目、突破口がはじまりました。
 先ほどとは異なり、けれど届ける先は液晶越しにいる私たち。私たちのことをしっかりと見据えながら、この世界を生き抜くために。突破するために。昨日のラストナンバーを、今日は早々に届けてくれました。

「自分たちはお金をもらってしかるべき活動をしていると思っている」
 渋谷さんはそう語りました。無料配信ライブ。記憶にある限り、おそらくSUPER BEAVERのそれは、今回が初めてです。けれど、
「年末の最後くらい、いいことがあってもいいんじゃないかな」
 と。今回の配信ライブのきっかけを語ってくれました。そして。
「これが私たちの戦い方です」
 その言葉とともに、正攻法が始まりました。いつだって実直なその思いをぶつけてきた。きっと今日だって。言葉を紡がなくたって、たった一曲、この曲をセットリストに組み込んだというだけで、SUPER BEAVERの覚悟が感じられました。

 本来だったら皆で合唱する閃光、そして予感。その声を、私たちはメンバーに届けることは今日も出来ませんでした。それでも、私たちの思いは何処か届いているみたいで
「近所迷惑にならない程度に」
 と念押しはしつつ、それでも渋谷さんは私たちをいつも通り煽ってきました。

「本当だったら横浜アリーナの皆の前で披露したかった」
 そうして始まったのは東京流星群でした。先の二曲とともに、本来ならば全員で大合唱する曲。その声は届かなくとも、夜空を見上げて、きっとその空はつながっていて。かたちこそ違っていましたが、SUPER BEAVERの見たかった世界が少しでも紡げていれば。。

 SUPER BEAVERはメジャーデビュー、けれどインディーズに戻り、そして再び今年、メジャーデビューを果たしました。紆余曲折の非常に多かったバンド。それを象徴する、再メジャーデビューを決定づけたハイライト。
 たぶん、いつか。今年のことは誰だって思い出すとは思います。本当に最低な一年でした。けれど、そんな一年の中にもこうして最高の瞬間がありました。そんな瞬間を思い出せるように。ハイライトとして、目の前に映し出せるように。メンバーの演奏はより一層力がこもっているように見えました。

「安心して付いてきてください」
 応援してほしい。聴いてほしい。そんな言葉ではなく、付いてきてほしい。強い言葉です。そんなSUPER BEAVERの強い生き様を象徴する、今日のラストナンバーは人としてでした。
「人として 格好良く生きていたいじゃないか」
 理想論。でも、そんな思いを抱き続けていたら、いつかは成せるはず。現に、SUPER BEAVERはこのライブでも、その姿を見せつけてくれました。これからも私たちはこのバンドに全身全霊付いていって大丈夫。そう断言できるほどに。
 美しいストリングスとバンドの演奏。渋谷さんの声。その全てが横浜アリーナに。液晶越しの私たちに響きわたり、SUPER BEAVER横浜アリーナ公演は終了しました。

 ライブ終了後、SUPER BEAVERはこれからの在り方を示してくれました。新アルバム発売。Zeppツアーの決定。そして、今回望むかたちで出来なかった15th Annivesary ライブの開催。このライブは、配信でも届けられるみたいです。

 横浜アリーナ2日間。本来ならば華やかで、文字通り最高の瞬間を皆に届けられたはず。一度は夢砕かれてしまいましたが、しかしこうして別のかたちでSUPER BEAVERは実現してくれたんじゃないかと思います。
 バンドとして最高の瞬間を見せつけてくれたこのバンドのこれからを、絶対に見続けていきたいとそう強く思えました!